Lesson1-1 野菜と果物の定義

野菜とは何か?

そもそも野菜とはなんでしょうか?

私たちは野菜に対して漠然としたイメージを持っています。しかし「野菜とは何か?」と聞かれてはっきりとした答えを返せる人は少ないのではないでしょうか。

目の前にキャベツやトマトが並んでいるとしましょう。これらが野菜であることは一目瞭然ですが、ここにスイカやメロンが加わるとどうなるでしょうか。これはかなり難しいはずです。

私たちは小さい頃から「これは野菜」「これは果物」という風に教え込まれていますから、色や形を見るだけで「これは野菜」「これは果物」という漠然とした分類が出来てしまいます。目の前にみかんを差し出されたとしても、多くの人は果物に分類するはずです。

しかし、なぜそれが果物なのかという話になると、答えられる人はほとんどいません。

もちろん「野菜・果物」のプロがそのような細かい疑問に答えられないのは問題です。ここで野菜や果物の定義に関する問題を抑えておきましょう。

野菜と果物の定義

試しに「野菜」を『日本国語大辞典』で引いてみましょう。

「野に生じて食用となる草木。また、畑に栽培している食用に供する草本。野菜物。あおもの」

と記載されています。草本(そうほん)とは「地上の木部が発達しないので一年で枯れる植物体」のことで、これをひっくり返した「本草」は「植物」の意味になります。江戸時代には植物学のことを「本草学」と呼んでいました。

草本の定義はともかくとして、これでは漠然とし過ぎていてあまり「野菜の定義」といった感じはしません。もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、実を言うと野菜に関するはっきりとした定義が存在するわけではないのです。

昔の人も今の私たちと同じように、野や畑に生えている食用の草木を「野菜」と漠然と感じていたようです。

果物に至っては、「木や草になる食用の果実」程度の認識ですから、こちらも漠然としていますね。

農林水産省の定義

餅は餅屋ということで、野菜のプロが集う農林水産省の公式サイトを見てみましょう。

「野菜と果物の違いを教えてください。また、すいか、メロンは野菜、果物のどちらですか。」という質問に対して、生産分野における一般的な「野菜の特徴」として以下の見解を挙げています。

(参考URL:https://www.maff.go.jp/

  1. 田畑に栽培されること(栽培されていない山菜などは野菜と区別することが多い)
  2. 副食物であること
  3. 加工を前提としないこと(こんにゃくのような加工を前提とするものは野菜としていない。漬物のように原料形質がはっきり残っているものや家庭における簡易加工は加工に含まない)
  4. 草本性であること

また、「農林水産省では、果実を、生産や出荷の統計をとる上で果樹として分類しています」とあり、やはり不明確です。「なお、いちご、メロン、すいかなどは野菜に分類されますが、果実的な利用をすることから果実的野菜として扱っています」とも書かれており、やはり明確に定義するのは難しいようです。

全国の自治体でも実はこのあたりの定義は揺れており、いちごやメロン、すいかなどの分類は野菜だったり果物だったりとまちまちです。野菜と果物を明確に定義するのは難しく、専門家の間でも揺れているため、実はきっちりとした答えを出すことはできません。

「野菜と果物を万人が納得するように分類するのは難しい」

これが唯一の答えなのです。

答えがないのが答えというのはなんだか達人の領域のようにも感じますが、しかしプロたるものがそんな曖昧な定義で逃げてしまうと話が先へ進みません。

JA全農などの機関が述べる「実を食べるのが果物、果実以外も食べるのが野菜」といった分類の仕方も万人に分かりやすくて良いのですが、細かい話をするのには向いていません。

そこで、本講義ではより学術的な分類に踏み込んでいきます。次回のLessonでは、野菜の5つの分類について学んでいくことにしましょう。